ホーム > 匠 - 経験に裏打ちされた独創 > Interview 1 水口敦夫


お客様と真正面から向き合わなければ、
良いものづくりはできないんですよ。
現在、60歳を過ぎた水口は、ものづくり一筋に生きてきたフジオート屈指の熟練スタッフだ。これまで一部の特別車両装備を除く自操式運転補助装置すべての型取り(実装する車種に合わせた専用設計)と製作を手掛け、今日ではその修練された技術力で左ウインカーレバー、延長ペダル、手型旋回装置などの型取り・製作を専任している。
たとえば左ウインカーレバーは、右手が不自由なドライバーが左手でハンドルを握りながら、指先でウインカーを操作できるようにサポートする装置である。一見すると、通常のウインカーレバーに長い延長アームを取り付けただけのようにも見える。しかし、遊びのない動き、正確な切り替え性能、保安装置と
しての品質など、その製作には熟練技術者ならではのノウハウと経験が要求されるのだ。
そんな水口は、忘れることができない苦い思い出を抱えていた。
「入社して間もない頃、私が発したひと言が、お客様を怒らせてしまったんです」
フジオートの自操式運転補助装置はすべて、お客様のハンディキャップと運転する自動車に合わせ、一つひとつ製作していく。その工程は、お客様の車から型取りを行って装置の仕様や取り付け方法を割り出し、汎用性の高いプロトタイプを製作したうえで、お客様が快適に操作できるかたちにカスタマイズしていくのが一般的だ。
ある案件で、お客様の車にプロトタイプの装置を仮装着したとき、お客様が『要望していたものと違う。これでは運転できない』と怒り出した。プロトタイプを完成品と誤解したらしい。その誤解を解くため水口は、『これはあくまでも"標準タイプ"であり、これをもとに調整していく』と説明した。ところが、その言葉にお客様はさらに怒りをあらわにした。標準タイプで操作できない自分は『標準ではない人間だ』と言われたと捉えてしまったのだ。
この出来事は、技術者一筋で"もの"と向き合ってきた水口の心に大きな衝撃を与えた。
「私は技術者ですから、ものづくりが仕事。お客様への対応は営業スタッフの仕事だと、心のどこかで思っていたんでしょうね。でも、あの出来事で気づかされました。技術者はただ便利で安全な道具を作ればいいのではない。お客様一人ひとりと真正面から向き合ったものづくりをしないとダメなんです」
匠の素顔
常に"技術者"であり続けること。それが私のこだわりなんです。
匠の素顔 NEW
僕は自分自身をまだまだ発展途上の技術者だと思っています。
匠の素顔 NEW
私たち技術者はみんな、お客様によって育てていただいているんですよ。