第43回 国際福祉機器展 HCR2016
展示のご報告

2016年10月12日~14日に開催されましたHCR2016では、
多くのお客様にフジコンブースまでお越し頂き、心より御礼申し上げます。
ここでは、HCR2016での展示の紹介などをまとめております。

手動運転装置はどれでも同じだと思っている皆様に

 最近、「手動運転装置は何を使っても同じ」という方が増えているように思います。ただし、私はこう付け加えます。「腕力や手首の力が十分にあって、ステアリンググリップを使わずに片手でハンドルを回すことができ、通常の運転席シートでも運転中に体幹を保持できる方にとっては」と。
 世界的にも手動運転装置の主流と言えるのが、床から縦に立ち上がるコントロールレバーを前後に操作するフロアタイプです。このタイプが多く使われるようになったのは、装置の設計のし易さだけでなく、運転の操作感の良さや体を支える役割を担っている点なども挙げられます。
 それに加えて、コントロールレバーを少し作り変えて操作力を変えることができるので、様々な状況で運転するドライバーに合わせたカスタマイズが可能である、というところも重要だと思っています。
 今回、同じ車の運転席周りの部品を使って2台の手動装置の見本をつくり、手動運転装置のコントロールレバーの長さだけを変えて並べて展示しました。黄色の装置では、橙色のものに比べて少ない力で操作できるように、その代わり操作ストロークが大きくなることを見て頂けるようにしました。
 ユーザーの皆様にとって、実際に運転してみなくてはわからないことがたくさんあります。当社ではお買い上げ頂いてから1年以内であれば、無料でコントロールレバーの再製作を行うサービスを提供しています。それは、「慣れ」だけでは解決できない問題をスムーズに解消するための、重要なサービスだと考えています。

手動運転装置を進化させたい

 当社で作っている手動運転装置も、車に合わせるという進化だけでなく、もっと使い勝手のよいものにしていきたいという思いは、常に持ち続けています。
 今回も試作品をつくってみました。前回の球体と比較すると、好評だったように思います。製品化に至るかどうかわかりませんが、なるべく早く皆様に新しい手動運転装置をお見せしたいと思っています。

工業製品を「手作り」するという意味

 壁一面に展示したのは、左アクセルペダルLA-1の国産現行車の全ての装置の1/2モデルです。
 車種の数だけ装置を設計しているのは、余計な手間と捉えられるかもしれません。左アクセルペダルLA-2のように、弊社でも汎用品を利用した改造にも取り組んでおります。しかし、形状の決まった運転補助装置ありきで改造しようとすると、「運転スペース」「操作性」「車への加工」など少なからず何かを妥協することになります。それは、ユーザー様にも車にも失礼だと思っています。
 ユーザーの皆様が車に期待していることをできず限り全部残しつつ、お体のハンディを補う装置を取り付けることがプロフェッショナルであり、この「手間」を速く正確にできるよう技術を向上させるための努力を続けています。

継続した改良に向けた姿勢

 この製品はこうである、と決めつけてしまうと、新しい車種に対応できなくなってしまいます。特に、アクセルやブレーキに直接関わらない装置は、簡単に見えてそういった変化に非常に弱いものが多いです。
 例えばウィンカーは車を運転する上で最も大事な機能の一つですが、国産車の場合右手で扱えない場合には運転中にリスクのある操作が一つ増えることになります。それを補う装置として左ウィンカーレバーがありますが、今までは取り付ける既設のウィンカーレバーの形状だけを確認していれば比較的簡単に取り付けができました。しかし、今では右から左にレバーを伸ばすスペースがなかったり、装置そのものの重みが反動を大きくしてしまい誤操作を引き起こしてしまったりするなど容易には取り付けできない車種も現れ始めました。
 たかだか棒1本に見える左ウィンカーレバーであっても、常に改良を重ねなければならず、早急に結果を出さなければならないというシビアな世界であることを、今回試作製作した改良品を通じてお伝えできればと思い展示致しました。

自操式車両を総合的にプロデュース

 自操式運転補助装置は、アクセル・ブレーキ・ハンドル等の操作だけでは完結しない場合があります。車いすの方にとっての運転席への移乗や車いすの出し入れ、片マヒの方にとっての姿勢保持やドアの開閉など、ドライバーの方の環境によって必要とするものは様々あると思います。
 フジオートは長年様々な方々から自動車全体の総合的な改造のご依頼を頂いております。毎年改定される保安基準を遵守しながら、ドライバーの方々のご要望に応えていくことで技術力と経験を積み重ねて参りました。お車を移動手段のパートナーとして欠かせない存在にしたい、その思いを持って車の改造を担当させて頂いています。

車いすを車内に収納する大変さを
わかってもらいたい

 これからの高齢化社会にとって車が果たす役割について、私たちなりに検討しています。今目の前にある問題として、車いすにお乗りのご家族の方を車に乗せること、そしてその車いすを車内に収納することが、大きな負担になっているのではないか、と思っています。
 どんな車でも楽に車いすを収納できる装置を作りたい、と思い、HCRに出展するたびに試作機を作っているのですが、なかなかうまくいきません。今回も簡単に車いすを収納できる装置を人気車種に取り付けてみたのですが、満足のいくものには仕上がりませんでした。次の機会には是非完成させたいと、日々研究を重ねております。

最 後 に

 2017年は研究の年とさせて頂き、2018年のHCRに出展させて頂く予定です。2020年に向けた様々な社会の変化の中で、福祉車両がもっと良くなる大きなチャンスを迎えると思っています。その波に一緒に乗っていける様、社員一同努力して参ります。随時、ご相談やご提案も受け付けておりますので、お気軽にご連絡下さい。
 最後までご覧頂き、ありがとうございました。